「免疫療法」についての注意!!

現在、肺がんに効果があると承認されて保険診療で使用できるのは「免疫チェックポイント阻害薬」のみです。

巷では、樹状細胞ワクチン療法、活性化リンパ球療法、NK細胞療法、免疫賦活剤/BRM療法、サイトカイン療法などが「自由診療」で高額な医療費で行われていますが、これらは臨床試験できちんと効果が証明されているわけではないのです。

肺がん患者、家族の皆さんには、ネットの怪しげな情報に振り回されることなく、保険診療で認められた治療を受けられることをお勧めします。

日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授 勝俣範之DrがYomiDr.に書かれたコラムをリンクしておきます。

 

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)


https://www.ono-oncology.jp/contents/patient/immuno-oncology/step3_05.html

がん細胞はがん抗原を表面に出しているので、通常なら免疫細胞(T細胞)ががん抗原を認識してがん細胞を攻撃しそうなものですが(がん免疫)、そうはならないことが多いです。

これを免疫寛容といいます。

そのメカニズムについてですが、

がん細胞はPD-L1という物質を表面に出し、それがT細胞のPD-1という物質にくっつくことで免疫のブレーキがかかり、T細胞はがん細胞を攻撃できなくなります。

https://www.ono-oncology.jp/contents/patient/immuno-oncology/step3_05.html

最近使えるようになっている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、PD-1に対する抗体です。ICIによってPD-L1とPD-1がくっつかないようになると、T細胞の免疫のブレーキがかからなくなり、がん細胞を攻撃できるようになるとされます

2017年9月現在、ニボルマブ(オプジーボ®)、ペンブロリズマブ(キイトルーダ®)が非小細胞肺がんに適応承認を取得しています。


ニボルマブ(オプジーボ®)

Checkmate 017試験

Checkmate 017試験

進行(ⅢB/Ⅳ期)非小細胞肺がん(NSCLC)で扁平上皮がんの比較的元気(PS0,1)の患者さんに1次治療でプラチナ併用の治療を行った群に、2次治療としてニボルマブあるいはドセタキセルを投与しました。

その結果、ニボルマブ群は1年生存率42%、ドセタキセル群は24%で、ニボルマブ群は有意に生存期間(OS)を延長しました(ハザード比、0.59)。

またがんのPD-L1発現状況にかかわらず、ニボルマブ群はドセタキセル群よりもOSを延長しました(PD-L1の発現率が1%未満でもニボルマブ優位)。

 

Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Squamous-Cell Non–Small-Cell Lung Cancer. Julie Brahmer, M.D.,et al. N Engl J Med 2015; 373:123-135, 2015. DOI: 10.1056/NEJMoa1504627

Checkmate 057試験

対象を非扁平上皮がんとしてChemate 057試験が行われました。

同様に二次治療としてニボルマブとドセタキセルを比較しました。

扁平上皮がんのCheckmate 017試験と異なり、最初の6か月くらいまではドセタキセル群の方がOSが良いような感じですが、その後クロスしてニボルマブ群の方が改善し、全体ではハザード比0.73でニボルマブ群の方が良かったという結果でした。

PD-L1の発現別サブ解析で10%で切った場合、10%以上ではハザード比0.40(95%CI, 0.26-0.59)でニボルマブが優位、10%未満ではハザード比1.00(95%CI, 0.76-1.31)でドセタキセル群と同等でした

 

Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Nonsquamous Non–Small-Cell Lung Cancer. Hossein Borghaei, et al.N Engl J Med 2015; 373:1627-1639, October 22, 2015. DOI: 10.1056/NEJMoa1507643


ペンブロリズマブ(キイトルーダ®)

Keynote 024試験

Keynote 024試験

PD-L1の発現率(TPS)が50%以上の未治療Ⅳ期NSCLCに対して、1次治療として標準のプラチナ含む2剤とペンブロリズマブを比較したものです。

ASCO2017では、さらに延長解析が行われており、

2次治療までの無増悪生存期間(PFS2)、全生存期間(OS)とも有意にペンブロリズマブ群の方が優れていました。

Pembrolizumab versus Chemotherapy for PD-L1–Positive Non–Small-Cell Lung Cancer. Martin Reck, et al. N Engl J Med 2016; 375:1823-1833November 10, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1606774

Keynote 010試験

Keynote 010試験

TPS≧1%の既治療のNSCLCに対して、2次治療としてペンブロリズマブと標準のドセタキセルを比較したものです。

TPS≧1%で切っても、≧50%としても、OSはペンブロリズマブの方がドセタキセルよりも有意に延長していました。

組織型では、腺がんはペンブロリズマブが有意に良かったですが、扁平上皮がんではペンブロリズマブの方がいい傾向、という感じに留まりました。

EGFR変異があるとペンブロリズマブとドセタキセルではOSに差がありませんでした

Pembrolizumab versus docetaxel for previously treated, PD-L1-positive, advanced non-small-cell lung cancer (KEYNOTE-010): a randomised controlled trial.  Roy S Herbst, et al. Lancet, Volume 387, No. 10027, p1540–1550, 2016.


ICI特異的な副作用(irAE)

ICIは患者さんのリンパ球のがんへの攻撃力を高めて効果を発揮する薬です。

そのため、免疫が過剰に高まりすぎる副作用に注意が必要です。

自己免疫疾患関連副作用(irAE)と言います。

ここでは、メーカーのirAEのHPを紹介しておきます。

小野薬品/ブリストルマイヤーズ(オプジーボ🄬)

https://www.opdivo.jp/irae/lecture/

 

MSD(キイトルーダ🄬)

http://www.keytruda.jp/

 

主なものは、

内分泌障害(1型糖尿病、甲状腺機能障害、副腎機能不全、下垂体機能低下症)、間質性肺疾患、消化器系障害(大腸炎、重度の下痢)、神経系の障害(重症筋無力症、筋炎、神経障害など)、肝障害などです。


アテゾリズマブ(テセントリク🄬)

第3のICIとして2018年に発売されたのがアテゾリズマブ(テセントリク®)です。オプジーボやキイトルーダはTリンパ球のPD-1に結合して効果を発揮しますが、テセントリクはがん細胞側に発現しているPD-L1に結合して効果を発揮します。いずれもPD-1とPD-L1の結合を阻害するわけです。PD-L1は他にがん抗原提示細胞やT細胞にも発現しており、テセントリクによりT細胞のプライミング、活性化が期待されます。

https://chugai-pharm.jp/pr/npr/tec/moa/index.html

OAK試験

テセントリク®は、プラチナ製剤併用化学療法の施行中又は施行後に増悪した局所進行/転移性非小細胞肺癌患者を対象に本剤とドセタキセルを比較した国際共同非盲検無作為化第III相臨床試験(OAK試験)で、PD-L1発現を問わない有効性解析対象集団において主要評価項目である全生存期間(OS)の統計学的有意差が認められました(層別ハザード比(95%信頼区間):0.73(0.62-0.87)、P=0.0003[層別log-rank検定])。
OS中央値(95% 信頼区間)は本剤群で13.8ヵ月(11.8-15.7)、ドセタキセル群で9.6ヵ月(8.6-11.2)でした。

OSのKaplan-Meier曲線:PD-L1発現を問わない有効性解析対象集団。

PD-L1の発現を問わずに二次治療以降で標準治療であるドセキタキセル群よりもOSが有意に延長したことから、非小細胞肺がんの二次治療薬として期待されます。

https://chugai-pharm.jp/pr/npr/tec/eft/index.html