細胞表面にはEGF(上皮成長因子)の受容体(EGFR)が存在します。EGFRがリン酸化されると増殖、腫瘍形成、形質転換、アポトーシス抑制などのシグナルのスイッチが入ります。

非小細胞肺がんの一部でEGFRが変異しているもの(mEGFR)は、細胞増殖のシグナルのスイッチが入りっぱなしになり、がんが増殖します。

EGFRのリン酸化はチロシンキナーゼで行われます。このチロシンキナーゼを抑制するチロシンキナーゼインヒビター(TKI)、すなわちEGFR-TKIと言われる抗がん剤が2002年に日本ではじめて発売されました。

一般名ゲフィチニブ、商品名をイレッサ🄬といいます。


当初、EGFR-TKIの作用機序が不明で、日本人、女性、腺がん、非喫煙者にイレッサ🄬の効果が高い患者さんが多かったのですが、EGFR遺伝子変異があると効果が高いことがわかり、適応もEGFR遺伝子変異のある非小細胞肺がんになりました。

上図はゲフィチニブと標準抗がん剤(カルボプラチン+パクリタキセル)を比較したIPASS試験です。EGFR遺伝子変異が陽性だとゲフィチニブの方が治療効果が高く、陰性だと標準抗がん剤の方が治療効果が高かったのです。


その後、2007年にエルロチニブ(商品名タルセバ🄬)も発売されました。

上図はエルロチニブとカルボプラチン+ゲムシタビンを比較したoptimal試験です。EGFR変異も何種類かあることがわかってきて、主な変異はexon 19の欠失とexon 21の点突然変異(L858R)で90%を占めます。

exon19欠失、L858Rの両方とも標準化学療法より成績が良かったのですが、exon19の方がエルロチニブが効きやすいという結果でした。


2014年には第二世代のEGFR-TKIとしてアファチニブ(ジオトリフ🄬)が発売されました。既存のEGFR-TKIは化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)の延長は認めていましたが全生存期間(OS)の延長は証明されていませんでした。

アファチニブはLUX-lun3, LUX-lung6の統合解析において、全生存期間の有意な延長を認めました。


EGFR変異陽性の非小細胞肺がんにEGFR-TKIを使うと、1年程度で効果がなくなってしまいます。これを耐性といいますが、その原因で一番多いのが、T790Mという変異です(約50%)。

そこでT790M変異をターゲットとしたEGFR-TKIの開発がすすめられ、第3世代EGFR-TKIとしてオシメルチニブ(タグリッソ🄬)が2016年に発売されました。

1st lineが病勢進行(PD)となった非小細胞肺がんでT790M変異のある患者さんでオシメルチニブと化学療法(プラチナ+ペメトレキセド)のPFSを比較したAURA3試験では、オシメルチニブ群が有意にPFSを延長しました。