喀血(かっけつ)とは,気道から肺の領域にかけての出血が口からでてきた時を言います.
血痰(けったん)は痰に血が混じる程度の軽い喀血です.
血痰が出た本人は大変不安のことと思われます.必ず病院を受診して下さい.
診療の流れとしては以下のようになります.
(1)まず第一に...
全身状態(呼吸,血圧,脈拍,意識レベルなど)をチェックします.
大量の喀血であれば,原因究明は後回しにして,まず止血しなければ窒息の危険があり,血圧も低下するかもしれません.
痰にうっすら血が混じる程度なら,いろいろ検査する時間的余裕があります.
(2) 次に本当の喀血か確認
本当の喀血かどうかを確認します.
胃や食道からの出血は吐血(とけつ)であり,呼吸器領域とは異なります.
喀血の場合,痰に伴って出てくることが多く,泡状であり,アルカリ性で赤い血が一部に混じっていることが多いです.
これに対して吐血では,吐いた物と一緒に出てくるため,胃内容物が混じっていることがあり,酸性で色が黒っぽいことが多いです.
睡眠中の鼻出血がのどを刺激して咳とともに出てきたため,喀血と言って受診することもあります.
強い咳によって,咽頭粘膜の表面の血管が一時的に破れて血が混じることもあります.
(3) 次に喀血の発現状況,随伴症状の聞き取り
喀血したのは安静時,睡眠時,労作時?
平素からある?今回はじめて?タバコは?抗凝固療法をしていないか?
呼吸器疾患,心疾患,腎疾患,消化器疾患,血液疾患などの既往は?
咳,痰,発熱,呼吸困難,胸痛などを伴うか?
(4) 喀血,血痰の原因として頻度の高い疾患
気管支拡張症--咳,痰を伴うことが多い.副鼻腔炎の合併も.
肺結核--咳,痰を伴うことが多い.微熱がつづく.
肺がん--血痰が出るということはある程度進んでいることが多い.
特発性--原因不明のもの.結構多い.
(5) 喀血,血痰の原因として一応考えるべき疾患
肺炎,肺化膿症--発熱,咳,痰を伴うこと多し.
うっ血性心不全--呼吸困難をみること多し.
肺真菌症--特にアスペルギルス症では喀血をみること多い.
肺塞栓症--突然の胸痛であることが多い.
胸部外傷--肺挫傷(肺の内部の出血)や気管支表面の血管の損傷などで.
気道異物--問診で確認.
喉頭癌--喉頭ファイバースコープで確認.
Goodpasture症候群--肺胞や腎臓の糸球体の基底膜に対する自己抗体が原因の疾患.
血液疾患--出血傾向による出血など.
などを考えます.
(6) 喀血,血痰の時に施行すべき検査
胸部X線,喀痰検査は全例に行います.
胸部CT,気管支鏡,出血-凝固検査は症例によっては考えます.喀血が1回だけでなく,何回か続く時は施行すべきと考えます.
心不全を疑う時は心電図や心エコーなど心機能検査を,肺塞栓を疑う時は肺血流シンチや肺血管造影を考えます.
Goodpasture症候群を疑う時は,腎機能検査や血中の抗基底膜抗体を測定します.
ざっと簡単にまとめましたが,重篤な病気が潜んでいることもあり,血痰が出た場合にはたとえそれが1回でも医療機関を受診することが重要です.