胸が痛い場合,呼吸器科以外の頻度の方が高いと思われます.
呼吸器科関係で胸痛がおこる病気としては大体以下のとおりです.
(1) 急性気管支炎(いわゆる風邪)
咳や痰を伴うことから診断は比較的容易です.咳が長く続く場合に,呼吸筋が疲労して筋肉疲労を起こしたものと考えられ,呼吸器外来ではよくみかけます.
(2) 自然気胸
気胸が起こった時に,胸痛,呼吸困難といった症状を訴えます.この胸痛は,「突然」起こる痛みであることが特徴です.若いやせた男性におこった突然の胸痛はまず気胸を疑います.
(3) 肺炎,胸膜炎
肺炎の炎症が胸膜に波及すると胸膜炎となります.胸膜の炎症のため,胸痛を訴えます.この胸痛の特徴は,呼吸にともなって増減することです.特に大きく息を吸った時には,肺が膨張するため胸膜との摩擦が大きくなり,痛みが増すという特徴があります.
(4) 肺梗塞
下肢に静脈瘤があるような場合,血流がとどこおって血の固まりができ,何らかの拍子に肺の血管に詰まってしまうような場合です.あるいは,骨折後に脂肪が血流に入り,肺血管に詰まるような場合です.やはり突然おこるのが特徴で,呼吸困難,ショックに陥ることも多い病気です.胸部X線ではなかなか異常がわからないので,まずこの病気を疑うことが重要です.
(5) 肋骨骨折
本人に覚えがある場合はすぐわかりますが,咳が長く続いても肋骨にひびが入ることもあります.胸部X線ではっきりしないこともありますが,該当部位をたたいてみて痛むかどうかで大体わかります.
呼吸器関係で胸痛を来すのは意外に少ないのがわかります.
他の病気としては
循環器関係では,狭心症,心筋梗塞,僧帽弁逸脱症,解離性大動脈瘤,大動脈弁狭窄症,特発性肥大型心筋症,急性心外膜炎,バルサルバ洞破裂など
消化器関係では,食道炎,胆石症,胆のう炎,急性膵炎,アカラジア,食道憩室炎,食道裂孔ヘルニアなど
その他,ヘルペス(Herpes Zoster),精神的なもの(結構多い)などがあります.
ひとくちに胸といっても,そこには肺だけではなく,大血管,心臓,食道,皮下の神経,筋肉,皮膚など多くの臓器があり,それぞれ胸痛の原因になりえます.また腹部臓器の胆のうや膵臓の炎症も胸痛として感じられることもあります.