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間質性肺疾患は、肺胞の壁が硬くなり、肺の伸縮性が失われる病気です。
治癒させる薬がない難病で、進行を抑える薬がメインの治療になります。
1.病因不明のもの(IIP; idiopathic interstitial pneumonia)
これはさらにサブタイプに分類されており、主なものは下記のとおりです。
2.病因が明らかなもの
過敏性肺炎,塵肺,薬物性肺炎,放射線肺炎,感染症,循環障害,慢性細気管支炎
3.全身的系統的疾患
膠原病(こうげんびょう),サルコイドーシス
4.その他
肺胞蛋白症,肺胞微石症など
気管は,気管分岐部で左右気管支に分かれ,枝分かれを繰り返しながら区域気管支,亜区域気管支,終末細気管支,呼吸細気管支となり,酸素と二酸化炭素の交換の場である肺胞に至ります.
通常の肺炎が肺胞の内部で主に炎症が起こっているのに対して,間質性肺炎は肺胞と肺胞の間の隔壁の部分(これを間質と言います)に浮腫,細胞浸潤をおこし非細菌性炎症をきたす疾患です(図1).
図1:左が細菌性肺炎.右が間質性肺炎.1つ1つの円が肺胞を表している.
細菌性肺炎では肺胞の中の炎症が起こるのに対して、間質性肺炎では肺胞と肺胞の間の隔壁(間質)に炎症が起こる.
炎症が繰り返されると異常な修復が起こり、間質に線維芽細胞が浸潤してきて線維化が起こります.
線維化がおこると肺胞隔壁は肥厚し固くなります.つまり,肺が伸びにくくなるわけです.
その結果,呼吸困難や咳などが出てきます.熱や倦怠感が症状のこともあります.
胸部X線上はスリガラス状と形容される淡く白い陰影(GGO)を呈し,線維化がすすむと蜂の巣状に見えます.
肺が線維化してしまうと元に戻すことは多くの場合困難です.呼吸困難が進行し,予後は不良のことが多いです.
胸部X線,CTの蜂巣肺,聴診上のマジックテープをはがすときのようなバリバリという音(Velcroラ音),肺機能検査の肺活量低下などが参考になりますが,確定診断は肺生検です.
手術で開胸して生検した方が確実に診断がつきますが,侵襲も大きいため,以下の方法もよく行われます.すなわち,気管支鏡(カメラ)で透視下に肺の組織をとってくる(TBLB)とともに,生理食塩水で末梢気道と肺胞の洗浄をおこない回収した中にどんな炎症細胞が増えているかをみる(BAL)方法です.
IPF(特発性肺線維症)といわれるタイプに関しては、必ずしも病理診断でなくても臨床的に診断することが認められています.
以前は経口ステロイドが(やむなく)使用されていました.ステロイドは免疫抑制作用があり,抵抗力も下がるので感染に注意しなければなりません.
病因によってステロイドの効果には差があり,膠原病やサルコイドーシス,放射線によるものなどは比較的よく効きます.薬物によるもの(抗ガン剤や漢方など)は薬物をまずやめることが必要です.
IPFはステロイドが無効のことが多く,ガイドラインでも推奨されません。
IPFに関しては線維化の進行を抑える薬、すなわち抗線維化薬(ピレスパ、オフェブ)が治療の中心になっています.
低酸素血症に対しては,対症的に酸素投与や気管支拡張薬を投与します.