メルマガ7・8:結核の治療


【第7回】結核の治療
結核は結核菌による感染症なので、結核菌に対する抗菌薬を使うことになります。
通常の細菌性肺炎ではペニシリン系、セフェム系、マクロライド系などを使用しますが、これらの薬は結核には効きません。
逆に肺炎治療で上記の薬を使用して効果がない場合、その陰影が結核による可能性を考える必要があります。
その他、ニューキノロン系の薬剤があります。
これは細菌性感染にも効果がありますが、結核菌にもある程度効きます。ニューキノロン系の薬を安易に使用すると、結核菌をしばらく抑えることができてしまいます。
ということは、結核の発見が遅くなる(他人への感染リスクが高い期間が長くなる)ということになってしまいます。

結核の治療は思ったよりも長期間にわたります。
通常の細菌性肺炎は1-2週間程度ですが、
結核の場合、内服や筋肉注射を6か月から9か月行う必要があります。
また、結核の治療は多剤併用が原則です。
1種類だけではなく、3-4種類の薬を数か月服薬する必要があります。
どうしても薬を忘れてしまったりすることがありますが、
結核の薬については必ず指定期間服薬した方がよいとされます。
それは、中途半端な服薬は結核の耐性化を招くおそれがあるからです。

結核と診断され、治療が開始されると、時々保健師さんから連絡が入ります。
「ちゃんと薬が飲めていますか?」。
これはきちんと最後まで服薬してもらい、結核が耐性化することを防止するため、
一種の社会防衛のために行われています(DOTSといいます)。

 

【第8回】結核の治療薬

今回は結核の薬についてです。
前回書いたように結核の薬は複数使用することが重要です。
その中でも中心となるのが、イソニアジド(INH)とリファンピシン(RFP)という薬です。
排菌している結核患者にはこの2つの薬を数か月間、継続して内服してもらう必要があります。
主な副作用は
(1)INH:ビタミンB6欠乏とそれによる末梢神経炎(しびれなど)、肝機能障害、発熱など
(2)RFP:胃腸障害、肝機能障害、アレルギー、血小板減少な
その他、期間限定でINH、RFPに追加する薬があります。
エサンブトール(EB)、ストレプトマイシン(SM)、ピラジナミド(PZA)です。
主な副作用は
(3)EB:胃腸障害、視力障害、視野狭窄など
(4)SM:聴神経の障害とそれによる難聴、耳鳴り、腎機能障害、発熱、発疹など
(5)PZA:肝機能障害、高尿酸血症、関節の痛みなど

結核の治療は標準的にはA法とB法に分かれます。
A法:INH+RFP+EB(あるいはSM)+PZAを2か月行い、その後INH+RFPを4か月行う(計6か月)。
B法;INH+RFP+EB(あるいはSM)を6か月行い、その後INH+RFPを3か月行う(計9か月)。
できるだけA法を行いますが、高齢者や肝機能が悪い人にはB法を用います。
基礎疾患に糖尿病があるとき、治療を始めても長い間菌が出続ける重症例、
粟粒結核(身体の中に2ヶ所以上の結核病変がある)の場合はさらに3-6か月服薬期間を延長します。